部屋

部屋の入り口に立つと正面は庭へ通じるガラスの引き戸です。
左手は造りつけの本棚で、赤くこっくりした色の板が同色の床と天井の間を仕切っています。

家全体が打ちっぱなしのコンクリで、特に1階の部屋には重量のあるものに囲まれる閉塞感があります。
それは密閉されて邪魔が入らないという安心感も伴っていて、私は気に入っています。

部屋の奥にはガラスを背に本棚に接して勉強机がありました。
使用しないときはボードを立ててコンパクトにしておける素敵な机です。
上にはアンティークのランプ、足元には地球儀が置いてありました。それらは私の部屋にもあるガラス戸と庭越しに見えて、どうして地球儀だけ、カーテンの外側にあるのかと思ったものです。

部屋の奥の、机と反対の壁際にヘッドボードを窓側にしてベッドがありました。
起き上がると手の届く高さの壁にフックが取り付けられていて、ハンガー等をかけておくのに便利なようになっています。

今部屋を覗くと、空間がなくなっていました。ダンボール箱が詰まっています。
でも私の脳は、目の前にあるはずだった景色を主張してきます。実際には、なくなったベッドや入り口近くにやっと入っている机が見えているので混乱します。

あの部屋の景色も、昨日の詩のように思い出すものになるのでしょうね。