質的研究と、ドキュメンタリーの違い

「社会状況の分析―質的観察と分析の方法 社会状況の分析―質的観察と分析の方法」
Lofland,John;Lofland,Lyn H
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4769908342.html

質的研究の古典的な教科書。質的研究の何たるか、をばーっと知るにはとてもよいと思う。普段ぼんやり考えていることを言葉で表現することで、一つのまとまった内容として定着させてくれる。そういう点では内田樹の文章に似てる。


分厚くて読むのに時間がかかり、前に何が書いてあったか把握しきれないのは仕方がないから、何冊か同じような主題の本を読んだり、ところどころ読み直す。


さて、これを読んでいてドキュメンタリーと研究の違いってこれかな?と思う部分があった↓

「データと分析の相互浸透・・・レポートの具体的特長としては、相互浸透はテキストにおけるデータと分析のたえざる密接な交替として現れる。・・・相互浸透の度合いが低い場合は、データと分析が乖離している状態にあると考えていいだろう。こうした乖離は、・・・データと分析が密接に結合されていないので、両者の関係は不明確なものとなる。・・・事実上、調査者が現実に何の分析しなかったことを意味する。」

たぶん、どんな気合の入ったドキュメンタリーでもこうはしない。たぶん。
この本の難点もうひとつ。繰り返しが多くて抜粋するとくどい。

ついでに印象的な部分2つ

「(レポート作成の指針を示してから)レポート作成の営為は、・・・たとえ確実に保証するとはいえないとしても、仕事に対する誠実さと徹底性を鼓舞するものであり、それによって読者はその研究を真剣に受け止め、そのレポートが重要であり、興味深いものと思うようになるのだ。」

そうそう。そうなんだよね。
ほんとかどうか分からないから、姿勢を評価する。


「最初にして最も重要な要因は、内容があなたと共鳴しているか、というものである。自分が重要であると感じている何かについて、レポートの内容があなたのいいたいと思っていることを語っていると感じるだろうか(信じる、とか理解するというより感じるという点が問題なのだ)。」


あとは、内容が重要だとみられるかどうかは流行だから、あまり気にしなさんな、
というアドバイスが続く。

なかなか面白いです。